講談社 講談社ノベルス 2004年01月
あらすじ
昭和8年、世間ではひたすら美しいものを狙う麝香姫の名が囁かれていた。
その予告状はうるわしい女文字でしたためられ、麝香の香りを封じ込めてることから「麝香姫の恋文」と呼ばれていた。
南海染色科学社長、神宮寺啓介の一人娘、真奈の誕生日と社交界のデビューを祝う宴が催されている中、そこに不似合いな風貌の一高教師の間宮諷四郎と、美貌の女性香月百合子は、神宮寺が長年の研究の結果成功させた、青い薔薇の花を頂くと麝香姫の予告状が届いた事を知る。
後日、厳戒態勢の中、神宮寺家で再開する諷四郎と百合子。
諷四郎は自らの推理により、先日の麝香姫の予告状が偽者であることばかりか、百合子が麝香姫であることまで見破る。
盗みに求めるものの確信をつく諷四郎の言葉に、甘い闘争心が沸く麝香姫。
彼に興味を抱いた麝香姫は、もう一度自分を負かしてごらんと、諷四郎に挑戦する。
女怪盗と一高教師とのゲームが始まった。
感想
物語は古ーーい印象。時代も古いし、言い回しも古いし、人物設定も古い。
が、ここで引くのはもったいない。確かに古い、と言う印象ですが、マイナス面だけではありません。
警視総監を父に持つ諷四郎、普段は上品な口調の美女ですが、ひとたび麝香姫となれば自分を「ぼく」と呼び男言葉になる百合子、そして富豪の令嬢真奈。
一昔前によく聞いたような設定だと思いながら、本当にそんな設定の本を読んでいるのか?話だけ聞いて読んでいる気になっているのではないのか?と思ってしまった作品でした。
パターンだから面白い、古いから逆に新しい。
何を盗むかと言うよりも、麝香姫が誰なのか?というよりも、それは早々にばれるのが意外で、面白いのは諷四郎と百合子の駆け引きです。
本当に諷四郎と百合子の性格がこの世界観とぴったりと合っていて、ものすごく爽快。この興奮は読まないと分かりません。
昔の推理物と言うと金田一耕助などが出てくるのでしょうが、そのあたりのイメージですね。
昭和初期の雰囲気が好きと言う方におすすめです。
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