講談社 講談社文庫 2009年08月
あらすじ
王獣の扱いに関する王獣規範に囚われることなくリランの世話を続けるエリン、やがてリランは回復し、エリンは竪琴でリランと言葉を通わすようになる。
本来人に慣れない王獣に近付く時には、音無し笛により硬直させなければ近づく事が出来ないが、エリンは音無し笛がなくともリランに近づき、餌を与える事さえできるようになっていた。
やがて成長したエリンの前に霧の民が現れ、エリンの王獣を戒律の中へ戻すよう警告を発する。
しかしリランと共に飛翔する事さえできるようになったエリンは、卒舎後は教導師としてリランも共にカザルム学舎に残る事となる。
その頃にはエリンが世話をした傷を負った野生の王獣エクとリランの間に子供が生まれていた。
飼いならされた王獣は繁殖能力がないのだが、その奇跡に真王がリランの子を見にカザルム学舎へとやってくる。
不用意に王獣へ近づいた真王の身を案じ、教導師達が音無し笛を吹こうとするが、エリンはそれを止め、初めてカザルム学舎以外の者の前で竪琴で王獣を鎮めた。
王獣に傷を負わされることもなく、王都へ帰ろうとする真王の元へ闘蛇が襲いかかった。それを見たエリンはリランを駆り救出へ向かう。
一命を取り留めた真王のもとで晩餐に招かれるエリンは、そこで王獣規範に始まるある真実を真王へ告げた。
護衛として同行し闘蛇により傷を受けたイアンは、そこでエリンと出会い、先程の闘蛇が自国の国防を担う大公の闘蛇ではないと知り、何者かの陰謀を感じる。
闘蛇に襲われた傷がもとで亡くなった真王の後を継いだセイミヤと、大公との間で起きようとする戦を止めるためエリンとイアルは王獣を駆った。
感想
音無し笛を使う事を否定していたエリン、しかしそれを吹いてしまう事態が起きてしまいます。
全ては自分の油断が招いたとはいえ、あれほど吹かないと決めていた音無し笛。その完璧ではないエリンに激しく心惹かれます。
そして、物語の最後がその光景が目に浮かぶように鮮烈です。
後半は真王と大公の間の闘争に巻き込まれていくのですが、その中で少しずつ動いていくエリンとイアン。
このイアンも堅き盾になるしかなかった生い立ち、それに感情移入していきます。
とにかくこの二人がいい!
飼われている王獣が野の王獣と違う理由、そして王獣規範の真意。
それを知りながらも戦場に立つエリン。
セイミヤが真王になってからはまさに怒涛の勢いでした。
本来ならこの巻で終わるはずだったようですが、続編があります。
そういう意味での続編には賛否両論が巻き起こりそうですが、たとえどんな結末が待っていようともどうしても読みたい!
そう思える作品でした。