高瀬彼方 ディバイデッド・フロント 3 この空と大地に誓う

おススメ度 9

角川文庫 角川スニーカー文庫 2005年03月

あらすじ

生駒を失い、桐嶋が臨時にイコマ小隊に入る事になった。生駒の代わりに隊長代理を務める楢先だが、彼女からは明るさは失われ余裕を失っていた。
ある調査に向かった途中、楢先のかつて恋人であり、アイドルだった朝霧和磨と再会する。
憑魔と味方の砲撃に挟まれていた一同は脱出に成功するが、着いた先は田園調布。
朝霧はここでバーベキュー大会を開こうとしていた。
いずれは分かれてしまうだろうイコマ小隊とのバカらしい思い出もいいかもしれないと、朝霧に付き合う土岐たち。
しかしそこではレッドキャップの女王が待ち受けていた。

ばらばらになっていた土岐たちに、ヨロイグマに襲いかかる。何故か銃撃が効かないヨロイグマ、その右手は倒したはずのレッドキャップの右腕だった。
何とか桐嶋と共にヨロイグマを倒した土岐は楢先たちの元へ向かう。
宮沢は負傷し、朝霧も重症を負っていた。

一方楢先はレッドキャップの女王と赤ん坊達を殺し地下を進んでいた。
土岐が追いつくと、彼女はすでに共生憑魔に支配されていた。

感想

最終巻です。
生駒隊長。あの楢先が頼っていた存在、彼の存在の重さが伝わってきました。
そして隔離戦区では「大軍」の憑魔に襲われます、それに対抗するため自衛隊による連日の爆撃と砲撃により戦況を持ち直します。
宮沢たちがぎりぎりの装備で戦う中、使われる事なく保持されている戦力。
その世界の現実の辛さにおののきます。
宮沢も戦闘員として戦いに望みます。あれほど怖がっていた戦いに、必要に迫られたというのもありますが、この巻までに彼女が成長した結果とも言えると思います。
そして土岐の共生憑魔の正体。本来ならばもっとクローズアップされる物だと思いますが、まずはストーリーがある。これが私の高ポイントの所以です。
そして土岐は楢先の弱さに直面します。
宮沢とは違う弱さ。振るえがきます。

その辛い戦闘を続けてきた土岐たち。
最後の挿絵にはっとしました。
この感動はたまりません。

実は作者本人の「ディバイデッド・フロント」に対するある文を読み、読み返そうと決意しました。
私はこの本を買ったときに他のスニーカーの作品と比べて違和感を覚えました。なぜなら1巻目でも書きましたが、決して大衆向けに書かれた本ではないと思ったからです。
だからこそ作者の伝えたい事、テーマ、それが全面に伝わってくる気がしました。
しかしライトノベルには違いなく、その域を出る作品ではないとは思うので、やはり一般に推せる作品ではないとは思います。
しかしそれでもあえて推したい作品です。
私はこの作品で泣きました。
1回目ではなく、2回目か3回目の時です。すでにこの先のストーリーも分かっているのに、今その文章を読んでいる、その時点の内容につい泣いてしまいます。
それほど彼や彼女達の視点で書かれている文章が上手いのです。

何度も言いますが、この作品は私が落ち込んだときに読む本に入っています。がんばろう、負けなようにしようと思える小説だと思います。

高瀬彼方 小説一覧へ

作者一覧へ

タイトルとURLをコピーしました