集英社 コバルト文庫 1998年06月
あらすじ
戦鬼となり仮面に体を蝕まれながらも、ジェネウは戦い続ける。
戦鬼の正体に気づかず、ジェネウに助け出されたミリッカとエスキルは再びキャミソールを率い戦いを始めた。
王籍を除籍になったアンネリもジェネウの助けを借りエスキル達と合流するが、戦闘の中ミリッカが大汗の息子たちにとらえられ、ジェネウと同じく心を操られたミリッカはウェルネルの復讐のためジェネウを狙う。
一方戦うたび痩せ衰えていくジェネウを戦いに導いてしまったことを悔やむアンネリは、ジェネウのためその前に立ちはだかる。
感想
面白いなと思うのは、人物の感情が向く方向がありきたりではないというところ。
そこが前巻でも書いた人間味という俗な感じがして私は好き。
どちらかといえば一般的に見れば、主人公はエスキルっぽい。
表舞台に立つのも今度名前が残るのもエスキルでしょう。
そしてその傍にいるのはアンネリではない。
ジェネウとミリッカの結末。
その時点で一つの最善の結果だとは思います。
この選択を避けるためにはもっと早く手を打たなければならなかったし、それはできなかった。
アンネリがいなければ別の結末だったかもしれない。
この小説で一番のわがままはアンネリですね。
立場をわきまえなければならないと思いながらも、恋心を捨てきれない。
忘れたつもりになってもあきらめきれない、だから誰かに力を借りよう。
最後には自分で戦う、にはなるのですが。
ジェネウ、アンネリと弱い者同士が結びつく、その危うさが面白い。
それは六人の兇王子の一巻目もそうでしたが、こっちは破綻してますね。
一般的な物語というより、過去の出来事を物語にしたという印象が強い小説です。
花田一三六さんほどではないですけどね。
コバルトだからと、恋愛ものを期待してはいけません。
ライトなファンタジーを求めてもいけません。
それを求めていないならどっぷりとこの話の面白さに浸れるはずです。
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