集英社 コバルト文庫 1994年03月
あらすじ
銀髪の吟遊詩人の少年は、つい足を踏み入れてしまった旧街道で盗賊に襲われた。
助けてくれたのは赤毛の少女剣士ヴィラローザ。
ヴィラローザは助けた謝礼を少年に求めるが、少年はすっからかんで、町に行けば稼ぐ手があるからと一緒にファルーカへと向かう事になる。
少年に名前を聞くが自分で適当につけた名前しかない少年、今ひとつしっくりこないその名前に、ヴィラローザは少年にシルヴィと名前を付ける。
途切れがちな旧街道で道を探すヴィラローザを待つ間、竪琴を調律するシルヴィ。せっかくだから一曲弾けと戻ってきたヴィラローザの言葉に、妙な事が続くからと渋るシルヴィ。しかし結局押し切られ、ファルーカの月影祭の歌を弾き始めると、ヴィラローザは周りの風景に幻を見た。
幻を呼び込む呪力を持った歌、幻影詩(ソムル)を歌う事の出来る者をソムラーダと言う。数十年に一人出るか否かという存在に驚くヴィラローザ。
再びファルーカを目指す二人を霧が包み、化け物に襲われる。二人は竪琴を弾いたせいで幻の中に迷い込んでしまっていた。
更に二人は化け物に追い詰められ、崖から落ちてしまう。
目的地であるファルーカで再会した二人だったが、そこは四百年以上前のファルーカだった。
感想
少女小説です。展開・挿絵・登場人物、どっぷり少女小説で、今読むとちょっと恥ずかしいくらいです。
でもこの小説が発売された当時は、こういう小説をいやと言うほど読んでいました。何冊か少女小説は手放しましたが、これは手放せません。
どちらかと言うと見た目の女性的な顔に反し、シルヴィの方が押せ押せな感じな所が好きです。
吟遊詩人で銀髪の美少年のシルヴィと、剣は滅法強いが、幽霊の類は滅法苦手なヴィラ。
物語の始まりは多少ありきたりな展開ですが、だからこそ面白い。
ストーリー自体は王家の陰謀などが絡んできて、中々ドロドロしています。それでも少女小説の域を出る事はありませんが。
雰囲気、挿絵、少女小説の手本のような感じです。
この「少女小説っぽさ」が当時の私はたまらなく好きでした。