徳間書店 店徳間文庫 1991年12月
あらすじ
「後世の月」
小野寺十内の妻丹。
老齢を迎えた二人だが、浅野内匠頭が吉良上野介に対し刃傷事件を起こす。
離れて暮らすことになる十内と丹、やがて夫の死亡が伝えられ、丹は食を断ち始める。
「しじみ河岸の女」
元赤穂藩御台所方の娘のはつは苦界へ身を堕としていた。
そこで以前下女をしていた平左衛門の嫡男斎宮助と再会する。
はつを苦界より救い出したいと、斎宮助は金策に走る。
「うそつき」
里は自分が大石内蔵助の娘だという母軽の言葉が信じられず、母を毛嫌いしていた。
やがて若旦那彦之丞と深い仲になるが、彦之丞は里に冷たい態度をとる。
彦之丞との仲を周りに嘘を言い続けた里は、母に謝罪を言いながら川へ飛び込む。
「幾代の鼓」
父の再婚相手に冷たくされる多佳は、彼女を見かねた家僕の協力もあり、父と京で暮らすことになる。
幸せな日々が続く中、稚児小姓の門六と出会う。
やがて親も認める仲となるが、門六に士官の話が持ち上がる。
感想
私は忠臣蔵の話は浅野内匠頭が吉良上野介に切りかかる。大石内蔵助が仇打ちをし、切腹。
くらいしか知識がありませんでした。まともに忠臣蔵関連の本を読んだのがこの本が初めてなのですが、私程度の知識でもこの本が忠臣蔵の本筋の小説ではないからか面白かったです。
「後世の月」、丹の一人称で書かれてあり、とても奇麗な言遣いで書かれてあります。
それが夫を心配する心情が美しく伝わってきて、思わずほろりときてしまいます。
理想の夫婦像の一つだと思いました。
「しじみ河岸の女」は恋愛調です。二人の若さゆえの熱意が、と言う所です。
「うそつき」は、最後のどんでん返しがスカッとします。
「幾代の鼓」は不遇を強いられた少女が父と暮らすことで幸せを手に入れますが、どこかで忠臣蔵と関わるのだと思うと、やりきれない思いで読んでいました。
本当に忠臣蔵の知識がなくても、面白いと思える小説でした。
どちらかというと男女の恋愛物がメインになっています。
忠臣蔵の知識が乏しい私は恋愛物として読みましたが、本当に昔の時代の純粋さ(うそつき以外)に心が洗われました。
澤田ふじ子さんの中では公事宿の次にお勧めしたいです。