あさのあつこ 小説一覧

[バッテリー]
(1)(2)(3)(4)(5)(6)/ラスト・イニング

バッテリー

おススメ度 7

角川書店 角川文庫 2003年12月

父の転勤で母の故郷へとやってきた原田巧。
ピッチャーとして天才的な才能を持つ匠は、彼の球を5球で取ることができたキャッチャーの永倉豪と出会う。
以前に巧の投球を見ていた豪。その球を受けたことで、野球の道をあきらめかけていた豪は再び匠とバッテリーを組み、野球を続けたいと熱望し始める。

しかし性格的にはとっつきにくい巧。弟に対してもその態度をあまり変える事はなく、体が弱いのに野球をしたいという弟青波が、初めて取ったボールを林の中へ投げてしまう。

そのボールを探し、帰ってこない青波。
巧は豪とともに青波を探しに行く。

初めて読んだのは、まだ二巻目が出た頃。
それからあっという間に映画化やドラマ化がありました。
漫画化もされてます。

と、とても有名な小説なのに、おススメ度がそれほど高くないのは、私が主人公の巧が好きではないからです。
どうにも性格が好きになれません。
もちろんあのきついながらも読み手を惹き付ける性格を好きな人はたくさんいると思いますが。
けっして小説自体が嫌いなわけではありません。嫌いな性格なのに続きが気になるという、何ともにくい所を突いてくる小説ではあります。

巧が青波をうっとおしく思う気持ち、心配する気持ちは、私も姉なので分かる分かると納得してしまいます。

小説の文章自体は鮮烈な印象を受けました。美しい文章の中、きつい主人公がきらりと光ります。
この痛さが特に若い女性に中毒的になるのではないかと思います。

ただ、全体的に一歩引いた視点で見ているような感じを受けます。今の小学生、中学生ってこんなの?と、すでに学生ではない私では多少なりとも思ってしまいます。
中学生という若い年齢と必要なのかどうか分からない少し同性愛的な要素。それがその原因なのかなと思います。

男性にはそこを青春時代の若い感情と割り切らないと、その時点で投げ出してしまうのではないかと思います。

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バッテリー(2)

おススメ度 7

角川書店 角川文庫 2004年06月

中学で野球部に入った巧。
しかしそこでは巧にとっては練習をしながらも中身のない部活、巧を頭から押さえつけるような監督戸村が待っていた。
同級生や豪はそれを我慢しようとするが、挑戦的な巧は上級生に目をつけられ、リンチに合ってしまう。
そしてそれに協力する形になってしまった同級生の水沢が姿を消す。

巧はギリギリまで入部を延ばしましたが、当然のように野球部へ入ります。
そして豪や野球を通じて水沢・東谷などの仲間ができますが、一筋縄ではいかないのが巧。

野球部でも自分の力で試合に出る、それを譲らない巧と、巧と一緒に試合に出たい豪がぶつかります。
一巻でも書きましたが、リンチなど言語道断ですが、そのきっかけは巧が自分の意思を貫き通した結果起こってしまった事です。避けるすべがあったのではないかと思うと、やっぱり主人公に好感が持てません。私が苦手なタイプだと言う事もありますし、私の性格では豪の意見の方に賛同してしまいます。
ただこの巻では巧が同級生達と遊んだりと、少し中学生らしい姿を読む事が出来き、巧の別の一面を見れたかなと思います。

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バッテリー 3

おススメ度 7

角川書店 角川文庫 2004年12月

巧に不満を持つ3年生が起こした不祥事により、野球部は活動停止となった。
夏が過ぎた頃には活動停止も解けるが、校長は野球部に不信感を抱き続ける。
それを払しょくするため、戸村は強豪校の横田と試合を組もうとするが、校長に却下されてしまうが、キャプテンの海音寺がなんとか横手のキャプテンと交渉し、試合を組むことに成功した。
一方で巧と豪のバッテリーに不協和音が響き始めていた。

何か月もクラブができない、しかし巧はその間も野球からは離れません。
そして必死に野球部を認めさせようと戸村と海音寺が奔走しますが、豪は巧の球を取れるかどうか自信を持てなくなってしまいます。

最初野球物と聞いていたので、もっと野球をしている小説だと思っていました。もちろん野球はしているのですが、試合数は多くなく、野球自体は文章外の事も多々です。
そして意外にがんばる国語の先生、小町。さりげなく重要な役を果たしています。

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バッテリー(4)

おススメ度 7

角川書店 角川文庫 2005年12月

密かに行われた横手との試合は横田の監督が現れた事でうやむやに終わってしまった。
そして巧と豪の降板。
豪は巧の球を受けなくなってしまう。

しかし横手の瑞垣は試合の再開を海音寺と練り始めていた。

豪の代わりにキャッチャーを引き受けることになった吉貞。
吉貞から練習に誘われ巧、向かった先には青波に引っ張られた豪、そして瑞垣、更に門脇も現れた。

最高のバッテリーだと思っていた巧と豪が、一瞬で崩れ、そこからは雪崩の如く瓦解していきます。
互いに互いが必要なのですが、かみ合いません。今まではずっと巧と豪のペアが多かったのですが、バッテリーを組まなくなった事により、巧の周りが入れ替わります。最初の方より、巧に人間味を感じました。
そして面白いのが海音寺と門脇のやりとり、意外と海音寺が食わせ者ですね。
しかし海音寺が若干狙った感を受けるのは、私の目にもフィルターがかかっているからでしょうか。何だかジャンルが違う小説を読んでいる気分になってしまいます。もちろん作者の意図かどうかは分かりませんが、女性受けはしそうだなと思います。

そして不覚にも終わりに入っている巧3歳の話「空を仰いで」に涙しそうになりました。
私も祖父母宅に入り浸っていたので、思わずその楽しかった頃を思い出してしまいました。

「空を仰いで」優しく、美しい文章でした。

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バッテリー(5)

おススメ度 7

角川書店 角川文庫 2006年06月

バッテリーとして復活した巧と豪。
しかし豪との関わりが巧の球に変化をもたらしていた。

そして横田との再試合も近づく。

すみません、内容の説明が短いです。
どうしてもまとめるとこんな感じになってしまいます。ではあと何が書かれているかというと、人物に焦点を合わせた内容が書かれています。

以前より鋭い球を投げるが、はずすことも多くなった巧。
そして豪や野球部の仲間との会話。
これが多くあり、巧のあまり感じられない中学生生活を感じられます。
バーガーショップに行く巧なんて想像できませんでした。そう思うのは私が巧を普通の中学生として見ていなかったからですね。

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バッテリー(6)

おススメ度 7

角川書店 角川文庫 2007年04月

巧との再試合を強く望む横手の門脇、そして着々と準備を進める海音寺と瑞垣。

横手との再試合が始まった。
再び豪とバッテリーを組みマウンドに立つ巧。
バッターには門脇、巧は最高の一球を投げる。

最終巻です。
相変わらず試合までが長いです。本当にいつ試合が始まるのかと思いました。
その最後の試合まで、新田・横手の面々のそれぞれの悩みが吹き出します。
巧は変わりましたね。本質的には変わっていませんが、序盤にはない行動が書かれているからかもしれません。1巻に比べ、ピッチャーとしての腕だけではなく、本来の性格を失う事無く、内面も成長しています。

人によっては不完全燃焼な終わり方かもしれません。はっきりと物語の完結を望む方には物足りないと思います。
ただ最後は、激しいはずなのに、静寂を感じさせる終わり方だったと私は思います。青春物、という意味ではふさわしい終わり方ではないでしょうか。

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ラスト・イニング

おススメ度 7

角川書店 角川文庫 2009年01月

「ラスト・イニング」
横手の門脇は推薦を蹴って地元の高校に進学した。
非難を浴びるその行為、門脇は幼馴染の瑞垣に相談することもなく、二カ月が過ぎる。
それを心配する海音寺はしつこく瑞垣に電話をし、門脇に会うよう勧めた。

そして野球部のない高校に進学した瑞垣は久々に会った監督よりコーチを頼まれる。

「空との約束」
横手との再試合の日、兄からもらったボールで友達と野球をする青波。
しかし偶然胸にボールが当たり、呼吸が苦しくなる青波は、一人その場所に残るが・・・・・・

「炎陽の彼方から」
小学生最後の試合が終わった豪は野球を辞める覚悟をしていたが、監督からある試合を見るように言われる。

バッテリーの続きですが、「ラスト・イニング」はどちらかと言うと横手と海音寺が中心です。
瑞垣のお兄ちゃんぷりが微笑ましいです。
そして海音寺と瑞垣の妹の意外な繋がりがと、横手の話を堪能できます。
瑞垣と妹の会話もバッテリーの中では俗な感じがして良かったです。

「空との約束」は、青波が主役です。今までは兄の巧を慕っているという印象が強かったのですが、いずれ兄に追い付くのではないかと思わせてくれます。

「炎陽の彼方から」が巧達の続編になります。横手との試合後が書かれています。6巻の最後で不完全燃焼した方は、少しは解消できるのではないでしょうか。
それでもまだまだこれから、という小説ですが、それも6巻と同じくバッテリーらしい終わり方ではないかと思います。

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