白石一郎 庖丁ざむらい 十時半睡事件帖

私のおすすめ度 8

講談社 講談社文庫 1987年10月

あらすじ

福岡藩黒田家中では知らぬ者もない名物男、十時半睡、名を一右衛門という。
様々な要職を歴任したのち、一度は引退したが、藩の御目付の制度の改革により十人目付が生まれ、その十人を統括する総目付役に適任者がなく、家中で最も人望のある一右衛門が家老達に懇願され、六十を過ぎた身でありながら総目付の要職へと返り咲いた。
息子の弥七郎も一度は江戸詰めとなったが、国元へ呼び戻され、珍しい親子勤めをする事となる。

一右衛門の仕事は気ままなもので、自宅にて様々藩士達の相談事が持ち込まれる。

感想

少しだけ読むつもりが、つい一巻読みきってしまいました。
十時半睡が主人公のわりに相談内容のストーリーに押され、それほど出番がありませんが、面白かった。

話が上手い。読みやすい。主人公達に好感が持てる。特に私は息子の弥七郎が好きです。
父親に輪をかけて出番はありませんが、何気に見せ場を掻っ攫ってるあたりがいいです。

話は、きっちり悪人は成敗しました。というのではなく、その後どうなった?という終わり方が多いので、最後はきっちり締めてほしいという方には少々不満が残るかもしれません。

完全悪、というのは少なく、特に悪人がいるわけでもない話も結構あります。
それなのに、面白い。この微妙な面白さを文面で伝えられないのが残念なくらいです。

十時半睡も完璧人間というわけでなく、熟年した経験のあるご老人の裁き、と言う感じです。

親子で活躍(?)というあたりが剣客商売を思い出させますが、特に十時半睡が切った張ったはありません、息子に多少あるくらいでしょうか。

とにかく面白かったです、おススメです。

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