荻野目悠樹 破剣戦鬼ジェネウ 裏切りの変

私のおすすめ度 8

集英社 コバルト文庫 1998年04月

あらすじ

騎馬民族キャムソールの貴族の子息ジェネウ。

病弱さゆえに父より疎まれていたが、兄弟のように育ったミリッカを心のよりどころとし、平穏に過ごしていた。

だが、大汗の血を引く友人のウエルネルが、差別を受けるキャミソールのため太子の地位を狙ったことにより騒乱に巻き込まれる。

 

ウエルネルの婚約者となったミリッカを慕う心に付け込まれたジェネウは、大汗の手勢を引き入れ友人を死なせ、自らもとらわれてしまう。

後悔にさいなまれるジェネウに大汗の第三公主アンネリより、彼女が慕うウェルネルの弟エスキルを救うため、つけたものを鬼と化す仮面を差し出してきた。

感想

始まりから重い。

プロローグの状況に、おそらく主人公ジェネウが起こしてしまった罪のため奔走しているのだろう、どうしてそうなったのか? を読まないといけないと思うとかなり気が重い始まり方です。

その気が重い始まりから一変、読みだしたら止まらない。

どちらかといえば戦記物ですが、アルスラーンのような感じではありませんし、人物もそれほど多くありません。

少なくもないのですがそれぞれの人物、特にジェネウ側が人間味があって面白い。

人間味と書きましたが、生き生きとしているではなく生身の、というところが私のポイント。

その中ではジェネウはちょっと浮いているでしょうか、自分から話すことが少ないRPGの主人公のような感じです。

ただ主人公は埋もれてもいいのです。

それがこの話には合っているのです。

 

コバルトにしては重厚なファンタジーで、決して女性向けでもなければやっぱり万人向けでもない。

女性向けなら暗殺者シリーズの方かなと思います。

重い話ですが、結末が知りたいがために読みだすと止まらない、この決して幸福ではない始まり方の終着点を知るため一気に読んでしまった小説です。荻野目悠樹 小説一覧へ

作者一覧へ

タイトルとURLをコピーしました