評論社 評論社文庫 1988年06月
あらすじ
大地震により両親を失ったエイラは、同じく大地震に遭い住んでいた洞穴を失ったため新しい洞穴を探していた、外見的に異なる旧人類に拾われた。
まじない女のイザに手厚く保護されるが、ブルンをリーダーとする一族はすんなりとは受け入れてはくれない。
そんな時エイラは新しい洞穴を発見する。
エイラには強い霊がいると確信する大モグウル、クレブの助言もあり、ブルンたちはエイラを一族に向かえ、クレブはエイラのトーテムに洞穴ライオンを示した。
更に今までつれあいを持った事のなかったクレブが、身重のイザとエイラを引き取り育てる事となる。
伝達手段が異なる種族のエイラは、身振りが多いイザたちの言葉を必死で覚えるが、まず覚えるべき事は行儀作法であった。
エイラの出現によって、自分への注目度が減っていると感じたブルンの息子ブラウドは、何かにつけエイラをいじめるが、男が女に命令するのは当たり前であり、それが中々エイラには理解できなかった。やがて成長と共に礼儀を身に付けていくが、ブラウドだけには反抗的な態度をとってしまう。
そしてイザに娘ユバが生まれた。
ある時、イザは怪我をした動物を治したいと洞穴へ連れてきたエイラに、薬師の才能を見いだす。
共に若くない自分とクレブのことを考え、イザは少しずつ薬草の知識などをエイラへと伝え始めた。
エイラはイザの手伝いとして、薬草を探しに行く途中、男達が石投げの練習をしているところを目撃する。
女は狩りに出ることも許されず、武器にも触る事が許されなかったが、エイラは一人石投げの練習を始めた。
感想
時代は紀元前約三万年、主人公はクロマニヨンの子で、イザたちはネアンデルタール。
と言われても小中学校(高校では歴史の授業がそんなになかったので)の知識しかない私には外見が違う、くらいにしか想像できません。
ですが、読むにはその程度の知識で十分、エイラの方が新しい人類だということがわかれば大丈夫です。
とりあえず原始時代に抵抗がない、と言うことが読む前の条件でしょう。
面白いのならどんな時代でもOKなら、十分面白いと思います。
5歳の少女エイラは旧人類に拾われますが、その中では醜い顔と、洞穴ライオンという強いトーテムを持ち、男より強いトーテムを持つエイラはつれあいも持てないだろうとされています。
霊を信仰する宗教的、まじない的な要素が氏族の主軸にあり、それを取り仕切る役のクレブと、母娘へと引き継がれていくまじない女のイザは氏族の中でも一目おかれている存在であり、エイラはその庇護の下暮らしていきます。
その信仰観が、少しファンタジーを連想させました。
そして結婚(つれあい)概念、男尊女卑、エイラにはそれが当たり前だという下地がないので戸惑います。
その概念はイザたちの脳に代々引き継がれており、一から覚えるエイラはとても苦労します。
そもそも発声器官が違うので、発音すら違います。
私には新人類と旧人類の細かい差は分かりませんが、人種的な差、その時代の生活、そして治療法、そして狩り、それらがみっちりと書き込まれています。
かなり難しい小説と誤解されるかもしれませんが、非常に読みすく、分厚くても一気に読める小説です。
このあらすじと感想は旧版の「大地の子エイラ」を元に書いています。名前などが新潮社版とは異なっています。第三部の「狩りをするエイラ」までは、旧版を読んでの感想になります。