高瀬美恵 帝都夢幻道 後編

おススメ度 8

小学館 パレット文庫 2003年11月

あらすじ

六花を庇い天羽に撃たれた須磨、しかし六花の最後の力のせいか傷の治りは早い。須磨は叢雲を壊すため怪事研と敵対する。

一方千代は雪雀が言った「雪のドロップス」を、友達の和歌が口にしていたことを思い出し、訪ねていた。
それは和歌が読んだ小説「雪姫」の中の一説で、作者は天羽八重子だった。
その実体験を投影した話の中で、六花は八重子の友達として書かれていた。
その話を見ても渡海は天羽を信じ、彼に運命をゆだねる。

一人彷徨う須磨の前に雪雀が現れ、須磨は雪雀に六花の亭主だった雷光とのつなぎを頼み、妖物と手を組んだ。
夢幻道と言う魔界と人間界を結ぶ道を見せられるが、とても人には渡れそうもない。しかし、ただ一人この道を越えた人間がいた。
その人間こそ八重子であり、彼女の中には人間と妖物の二つが混在していた。

母親が殺された事件を勘違いした須磨は、雷光の力に捉えられる。
雪雀はそんな須磨のため千代と和歌と手を組んだ。

渡海達を襲う須磨、しかし彼は叢雲の計画ため掘った穴へと消えていった。その直後穴から大群の魔物が現れた。
そして再び襲い掛かる雷光、しかし渡海、千代、三宮が何とか消滅させた。

穴に落ちる瞬間、須磨は渡海に向かい手を伸ばしたが、渡海はその手を取らなかった。しかし彼は再び目を開けた。
須磨の前には千代、三宮、渡海、天羽、そして雪雀が待っていた。須磨は渡海に対する敬愛を捨て切れなかった。

渡海を待っていたのは天羽と大きな旅行鞄だった。
大地震のせいで壊滅する帝都を離れ、どこかに逃げるつもりだった。戻ろうとする渡海を昏倒させ、天羽は帝都を離れる。

天羽の逃亡に気づき、地震が迫っている事を予感した千代たちは、それに備えるが、大正十二年九月一日、大地震は起こった。

叢雲は発動し、夢幻道は閉ざされた。雪雀は消え、体に妖物が住まう須磨も千代と三宮を送り出した後姿を消す。

平たく倒壊した家屋の中、千代と三宮は奔走した。

二人逃れてきた渡海と天羽。
渡海は目の前にいるのが神でもなく、生かしておけば危険きわまりない人物だと気がつく。
天羽の手にナイフが見えたとき、渡海の中の迷いは晴れた。

少しずつ活気が戻ってきた帝都。千代が被災者を見舞っている時、ある人物が戻ってくる。

感想

この独特の展開のよさ、高瀬さんの文章が後編もきちっと生かされてます。
読み返してみたら、つい夢中になってしまいました。
本当に笑えるところとシリアスのバランスがいいです。なので、展開が読めない。
もともと展開が読めない面白みのある文章を書かれ、だからこそ続きが気になる作者さんではあったのですが、この話も読めない展開で終わりを迎えています。
決して訳が分からないというのではありません。
雷光しかり、須磨しかり、最後まですべての人物が魅力的でした。
絵もストーリーにぴったりです。
2冊と言う短い話ですが、高瀬さんの話を堪能できます。
パレット文庫ながら、男性にもおススメできる1冊です。

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