澤田ふじ子 遠い蛍

私のおすすめ度 8

廣済堂出版 広済堂文庫 1998年03月

あらすじ

「雨あがる」
昔、自分たち夫婦のために力を尽くしてくれた老夫婦が、藩より落ち延び娘を売らねばならぬ状況になっているのを目にし、店を構えるために貯めた資金をその老夫婦のために使う。

「春の坂」
十年近く前に死んだ娘の墓に時折添えられる花。
娘と親しくしてくれただろう人物に一度会いたいと願うが、ある時父親に売られようとする姉妹に出会う。

「あとの桜」
賽銭泥棒をしていた老婆が、昔自分に忠告をしてくれた男の店の襲撃事件を立ち聞きし、その店の主人に自分がしていたことを含めすべて正直に話す。

「夜の蜩」
氷を作る村の娘加代は奉公先の息子に無体な要求をされ、許嫁は村から出奔してしまう。そんな加代のため兄は氷室の近くに火を放つ。

「ひとごろし」
互いに二度目の結婚の夫婦。妻は最初の夫との間に子供がいるが、引き取ることは出来なかった。しかし、その元夫の店が没落し、夫婦はその子供のために影ながら助力する。

「遠い螢」
武士と恋に落ちた奉公人の娘、おふさ。
そのために店で厄介払いされようとする。

「鉄のわらじ」
おきわの弟が借金をし、取り立ての男たちを連れ姉を頼ってきた。
そこに昔の知り合いの杢之助が助けに入る。

「ろくでなし」
夫の道楽のせいで店がつぶれ、貧しい暮らしを送るおけいと幼い娘のお雪。
ある時夫の借金代りに売られようとするが、なんとか逃げのび、ある店で住み込みの仕事を始める。

「雪の鐘」
御柿屋に勤める男は柿を求めある屋敷の木に登るが、その屋敷にいた娘に目を奪われ足を滑らせてしまう。
そしてしばらくその屋敷で厄介になる。

感想

話一つ一つが短いながらも面白かったです。
「あとの桜」、若いころの忠告を年老いてから身に沁み、賽銭泥を告白しても危機を告げる老女。
「ろくでなし」の最後にどうしようもない夫を恫喝する老女など、とても読み応えがあります。
「ひとごろし」は連れの子供なのに、自分の子供と変わらないと妻の子供を心配する夫が最高でした。
他の短編の小説に比べ、それぞれの終わり方がこの小説の方が私は好きです。
人の人情、愛情がしみじみと身にしみます。

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