タニス・リー タマスターラー
早川書房 ハヤカワ文庫 1987年03月
あらすじ
「龍の都」ある家に子供の語学の先生として入り込んだアグニーニーは、その子供を地下世界へと導く。
「炎の虎」
ある知り合いが虎に襲われたと聞く。自分に関係のない話だとたかを括くっていたが、次第にその真実に近づいていく。
「月の詩」
互いに醜く、仕方なく結婚した夫婦が、ある朝目覚めると全くの別人がいた。
「運命の手」
美しく生まれた男と、美しく生まれた女のある生き方。
「象牙の商人」
ある物書きの死の真相を探るうち、象牙へとたどり着く。
「輝く星」
スターとなったインドゥー、しかしだんだんと周りが信じられなくなっていく。
「暗黒の星」
テロリスト、ルナールの前に突如現れる少女、その彼女の正体とは。
感想
イギリス生まれの作者が書いたインドを舞台に書いた小説の短編集です。
文章は読みやすかったのですが、短編集な分面白さの差が少しありました。
一番面白かったのは「月の詩」、分かりやすい上最後が私好みです。「龍の都」も面白かった。
あまり外国の話を訳した、と言う感じがせず、バリー・ヒューガートさんの「鳥姫伝」の違和感に比べ、普通に日本の作家が書いたインド風の話のようでした。
タニス・リー 闇の公子
早川書房 ハヤカワ文庫 2008年09月
あらすじ
世界が平らだった頃、地底では妖魔の都ドルーヒム・ヴァナーシュタが栄えていた。
闇の公子の一人である美貌の妖魔の王アズュラーン、彼は時折人界に赴き、気の向くまま人々を弄んでいた。
「地底の光」
第一部
アズュラーンは死に瀕した母親が産み落としたみどりごを見つける。
完璧にして類まれな美貌を持つその子に興味を覚え、ドルーヒム・ヴァナーシュタへ連れ帰り、息子として、弟として、恋人としてシヴェシュを愛した。
ある時、アズュラーンと共に人界に下りたその子供シヴェシュは、妖魔が弱点とする太陽に心を動かされる。
次第に人間の世界に引かれていくシヴェシュに、アズュラーンは花より生まれたフェラジンを妻に娶らせた。
しかしそれでも太陽を忘れられぬシヴェシュ、彼はアズュラーンの自分への愛を過信し、その袂を分かつ事を決めた。
第二部
ドルーヒム・ヴァナーシュタにて金属細工を得意とする、醜い容姿を持つドリン。
そのドリンの一人はフェラジンより流れ落ちた涙で、七粒の宝石を嵌めた首飾りを作った。しかし、その首飾りを別のドリンに盗まれ、その首飾りを捧げるつもりだったアズュラーンの前で醜態を演じてしまう。
アズュラーンはその贈り物を退け、人間の世へと放った。
地底での品であった首飾りは、地上の世界ではすべての生き物を魅了する誘惑の首飾りとなり、その首飾りを巡り、幾度も血が流れた。
そして最後にその首飾りを手に取ったのは盲目の詩人カジールだった。盲目であるがゆえに首飾りに魅了されず、独特の力を持つが故に、その首飾りの宝石がフェランジの涙だと知ったカジール。
フェランジに恋をしたカジールはアズュラーンを探すため。妖魔の都を探す旅に出る。
「策士達」
第一部
十六の国を従える王ゾラシャード。その巨大な力は、アズュラーンが魔法の護符を奪ったことにより消えうせ、諸国の反乱を招き、ゾラシャードの一族は末の娘を残し処刑された。
逃亡の途中で負った傷により、醜い顔と曲がった手を持つ少女に成長した末娘のゾラーヤス。
幸福だった育ての親との生活は、彼の死をもって終わり、助けようとした男に襲われたことでゾラーヤスは魔女となった。
十六の国を従える女王となったゾラーヤス、自分からすべてを奪っていった者達に復讐を果たし、更にアズュラーンにも狙いを定める。
第二部
アズュラーンとの取引により絶世の美貌を手に入れたゾラーヤスはある兄弟が持つダイヤモンドに目をつけた。
その美貌により弟を篭絡し、半分のダイヤモンドを手に入れたが、兄のミラーシュは警戒を解かずゾラーヤスとの接触を避けていたが、とうとう弟の頼みを断りきれず、ダイヤモンドを渡してしまう。
しかしゾラーヤスが再び弟を省みる事はなく、失意のうちに弟は死を遂げてしまう。
そしてミラーシュはある語り部の話を元に、ゾラーヤスを罠にかける。
「世界の罠」
第一部
あまりの美しさに“美しき蜜”と呼ばれたビスネ。しかし彼女はアズュラーンを3度も拒んでしまう。
愛する人との婚礼の夜。彼女が目を開けると、そこには夫の代わりに怪物が横たわっていた。
夫を失い、形見の子を宿したまま絶望に嘆くビスネはアズュラーンを呪った。
生まれてくるはずの女児の魂は二つに分かたれた。女である方はそのままビスネの子として。
男の方はある夫婦の元へと生を受けた。
やがて美しい少女として育ったシザエル。しかし少女は物を言わず、物を聞かぬ、受身と静止、あいまいと不確実からなる陰の部分のみを引き継いでいた。
貴公子とも見紛う美貌を持つ少年に成長したドリザエム。しかし少年は気が荒く無鉄砲で、すさまじい力を持っていた。活動と変化、激しさと揺るぎなさからなる陽の部分のみを引き継いでいた。
しかしドリザエムはある詩人の前に涙を流す。その歌は分かたれた半身、シザエルの歌であった。
第二部
魔法使いカスチャックはある怪物を見つける。その怪物が人間であった事を見抜き、元の姿に戻す。
記憶の不鮮明な男はゲバと名づけられ、カスチャックの元で魔法を学びながら暮らし始める。
しかしゲバはすべてを思い出す。過去、名前、そしてもうすでにこの世を去っている恋人、ビスネの事を。
ケバの憎悪は世界を彷徨った。憎悪が憎悪を呼び世界は死へと向かい始める。
アズュラーンがしばし人界から目を離していた時であった。
感想
長い内容説明になってしまいました。もっとまとめられればいいのですが、つい長く書きたくなるほど面白かったのです。
ネットなどで評判が良かったので、ずっと探していたのですが、如何せん20年以上前の本で、中々手に入りませんでした。
しかし復刻されると聞き、即買いに行きました。
ネットを信じてよかった。読んでよかった。
アズュラーンがとにかくかっこいい。彼がメインの物語は最初の地底の光の第一部だけですが、要所要所で出てくるだけでも存在感があり、それだけでアズュラーンのかっこよさが伝わります。
強く美しく、そして気まぐれに人界に手を出す。この絶妙な性格のバランスを上手く伝える事は出来ないので、是非読んで頂きたいです。
訳も読みやすく、少々昔風ですが一気に読めました、きれいな文章です。
地底の光の第一部は、何と言うか耽美的ですね。その耽美さにクラクラきます。
個人的にアズュラーンの次にカジールが好きです、その次がミラーシュです。
とにかく美形な方々が男女問わず、たくさん登場します。
第一部はともかく、男性にも読んでいただける内容ではないかと思います。
とにかく雰囲気がいいです。世界観はファンタジーなのですが、名前のせいか少し神話を連想します。
そして最後、物語の繋がりがとてもうまく、本当に面白かったです。
タニス・リー 銀色の恋人
あらすじ
早川書房 ハヤカワ文庫 2007年4月
あらすじ
限りなく人間に近い姿の銀色の肌をもつロボット、シルヴァー。
母デーメータと裕福に暮らすジェーンは彼に恋をした。
今までの全ての生活を捨て、ジェーンはシルヴァーと姿を消す。
感想
あらすじが短いですが、シルヴァーを手に入れるまでや、友人たちのやり取りを除けばこんな感じです。
とにかくあちこちにジェーンの感情がほとばしっていました。
恋に向かって一直線、なのですが、外国の小説で少女の一人称は何とも性格が私の感覚とは違って入り込めないです。
「あたしと魔女の扉」のリーズンもそうですね。
それでもシルヴァーがロボットなので、ジェーンに対する行動はインプットされたものなのか、それとも別のものなのかと、ついつい先が気になってしまって一気に読んでしまいました。
色々な本の感想で書いているかもしれませんが、もっと私が若かったら、物事に対して一直線のジェーンの気持ちがもう少し理解できたのかもしれないなとも思います。
この年になって読むと甘酸っぱいより、どうしてそんな行動をするの? という疑問が先に立ってしまいます。
でもそれが外国の小説の良い所なのかもしれません。
似たような性格の主人公を書いても、なぜか日本の小説(私が読むのは主にラノベですが)はこんな感じにまで突っ走りませんし、突っ走ったとしても負の方面へ落ちていく感じの小説が多いです。
結局私は終わりまでジェーンに共感しきれる所はありませんでしたが、最後は応援したくなりました。
タニス・リー 銀色の愛ふたたび
早川書房 ハヤカワ文庫 2007年05月
あらすじ
ジェーンがシルヴァーとの恋を描いた本を愛読する少女ローレン。
彼女はMETA社が人間型のロボットを発売すると聞き、発表会場のシティへと向かう。そしてそこであるパーティーへと誘われる。
ローレンはそのパーティーでシルヴァーの記憶を持つヴァーリスと出会う。
感想
前回の主人公ジェーンとシルヴァーをもとに作り直されたヴァーリスとの再会など、続編として望むことが散りばめられています。
が、まさかこんな展開になるとは、というのが正直な感想です。
銀色の恋人がほぼ恋愛メインだったのですが、今回は色々陰謀的な感じがします。
前作より今作の方が俗っぽいし、ヴァーリスはロボットとして機能は増えてますがより人間らしくなっているはずなのに、シルヴァーの方が人間に近かった気がします。
その差は後半になるにつれ強くなってきます。
主人公にしても、施設育ちのせいかより庶民的に俗っぽいのですが、後半になるにつれ俗っぽさが薄れていきます。
これはジェーンと反対かなと思いますね。
こうやって二作を読んでみると、ローレンとヴァーリスよりジェーンとシルヴァーの方が好きですね。
私の性格としてはローレンの方が読みやすいのですが、銀色の恋人の方であれだけジェーンに対して色々書いたのに応援したくなるのはジェーンの方。
今作はスケールが大きくなってしまって、そんな必要あったかな、なんて思っていまいました。
前作は恋のひと騒動で終わっているのですが、それが良かったのに、と思ってしまいます。
