白石一郎 庖丁ざむらい 十時半睡事件帖
講談社 講談社文庫 1987年10月
あらすじ
福岡藩黒田家中では知らぬ者もない名物男、十時半睡、名を一右衛門という。
様々な要職を歴任したのち、一度は引退したが、藩の御目付の制度の改革により十人目付が生まれ、その十人を統括する総目付役に適任者がなく、家中で最も人望のある一右衛門が家老達に懇願され、六十を過ぎた身でありながら総目付の要職へと返り咲いた。
息子の弥七郎も一度は江戸詰めとなったが、国元へ呼び戻され、珍しい親子勤めをする事となる。
一右衛門の仕事は気ままなもので、自宅にて様々藩士達の相談事が持ち込まれる。
感想
少しだけ読むつもりが、つい一巻読みきってしまいました。
十時半睡が主人公のわりに相談内容のストーリーに押され、それほど出番がありませんが、面白かった。
話が上手い。読みやすい。主人公達に好感が持てる。特に私は息子の弥七郎が好きです。
父親に輪をかけて出番はありませんが、何気に見せ場を掻っ攫ってるあたりがいいです。
話は、きっちり悪人は成敗しました。というのではなく、その後どうなった?という終わり方が多いので、最後はきっちり締めてほしいという方には少々不満が残るかもしれません。
完全悪、というのは少なく、特に悪人がいるわけでもない話も結構あります。
それなのに、面白い。この微妙な面白さを文面で伝えられないのが残念なくらいです。
十時半睡も完璧人間というわけでなく、熟年した経験のあるご老人の裁き、と言う感じです。
親子で活躍(?)というあたりが剣客商売を思い出させますが、特に十時半睡が切った張ったはありません、息子に多少あるくらいでしょうか。
とにかく面白かったです、おススメです。
白石一郎 観音妖女 十時半睡事件帖
講談社 講談社文庫 1988年11月
感想
十時半睡事件帖の2巻目です。
今回は今一後味が悪い話が多かった気がします。
なのにおススメ度が8なのは半睡の息子の弥七郎が大変な目にあってるのが、かわいそうなのですが面白いからです。
「女たらし」でのうろたえぶりが面白かったです。ただ、話自体はちょっと微妙でした。この話の主人公格の男が女たらしでもいいんだけど、いくらなんでも情けなさ過ぎました。
表題の「観音妖女」はあまり好きじゃないですね、女の方がよく言えば純真なのだろうけど、だからといって犯罪が許されるわけでもないですし。
「逃げる女」は良かったです。
現代の熟年離婚を象徴するかのような話ですね、女性がたくましく好感が持てました。
白石一郎 刀 十時半睡事件帖
講談社 講談社文庫 1990年10月
感想
十時半睡事件帖3巻目です。
今回は男女間の話が多かったでしょうか。1巻目などの雰囲気とは少し違う感じでした。
あの空虚な感じが好きだったのに、普通の時代劇の短編物っぽいです。
救われてほしいのが救われず、救われなくてもいいやというのが救われているので、私的には残念な本でした。
女としてこんな旦那は嫌だ、と思う話が多いです。駄目さ加減が現代にも共通する所があるからかもしれません。
ただ読み終わった後の印象は悪くはありません。
今回は更に半睡があまり目立っていませんでした。
白石一郎 犬を飼う武士 十時半睡事件帖
講談社 講談社文庫 1994年09月
あらすじ
「犬を飼う武士」
お互い無理やり縁談を勧められている若い侍と、武家の娘。
二人で捨てられていた子犬の世話をするうちに、恋愛感情を抱き駆け落ちする。
「桜散る」
美貌の児小姓が、寵愛を盾に侍二人を死へ追い込む。
「千本旗」
酒を断つと決めた男が、出世したために酒を飲まなければならない事態に陥る。
「暴風雨」
暴風の後、特別の仲でもない居酒屋の女を心配して駆けつけてしまった、軽率な侍の話。
「勘当むすこ」
兄の死亡により、家を出ていた弟が無理やり家に戻され、妻子に不満はないが仕事に拒否反応を起こしてしまう話。
「弥七郎の恋」
半睡の息子弥七郎が未亡人に手を出してしまう話。
感想
十時半睡事件帖の4巻目です。
「勘当むすこ」が面白かったです。一度は家を出たとはいえ、武家の息子。しかしその生活は自分には合わない。妻子に不満がないだけに、その苦悩が面白かったです。
今回も半睡が突き放してしまう話が多かったです。女性には「桜散る」などが面白いのではないでしょうか?
しかし、今回の読みどころは何と言っても弥七郎の恋。あの弥七郎がまさかと思いました。
これを気に半睡は総目付を引退します、全く想像していなかった展開なのでびっくりしました。
「暴風雨の侍」も嫌いではないので、私なら何とか救ってあげて。と思うのですが、半睡はばっさり切ります。その潔さが私にはないので、かわいそうだなと思いながらも、爽快なんでしょう。
白石一郎 出世長屋 十時半睡事件帖
講談社 講談社文庫 1996年09月
あらすじ
「半睡、江戸へ」
阿部流の達人、中村勘平を供に江戸総目付として再び江戸へ行く決意をする半睡。
「赤坂中屋敷」
改革を進める中、金貸しをしていた侍が殺される事件が起きる。
「旧友」
二十数年前の同僚の鈴木甚太夫と再会する半睡。鈴木は妻子と死に別れ、若い妻と幼い子と暮らしていた。
「江戸修行」
秀才と名高い侍が、一つの学問では飽き足らず色々な学問に手を出す。
「出世長屋」
その長屋に住むと出世するといわれる長屋に住む事になった侍の話。
「目には青葉」
罪を犯して福岡藩の藩邸へと逃げ込んだ駆込み人と、それを庇う夫婦の話。
感想
十時半睡事件帖の4巻目です。
息子達と別れ、中村勘平を連れ江戸へやってきた半睡。
剣術稽古をするなど、今までの巻では見れなかった半睡の姿が新鮮です。
江戸へ行っても半睡の決断は相変わらず冴えを見せます。
「出世長屋」が面白かったです。
またばっさりいかれるのかと思いきや、珍しく結構救われた話でした。
白石一郎 おんな舟 十時半睡事件帖
講談社 講談社文庫 講談社 講談社文庫 2000年09月
あらすじ
「空っ風」
災厄を祓うという修験者の話。
「御船騒動」
当て逃げされた舟が、当て逃げされたと訴えられる。
「小名木川」
侍が親しくしていた老人が、実は盗賊だったという話。
「おんな舟」
引越しをしたため、出仕には舟を使うと決めた半睡。そこで、小料理屋の女将と出会う。
「駈落ち」
半睡の舟に赤子が捨てられていた。
「おんな宿」
家出をした少女達が共同生活をしている話。
「叩きのめせ」
半睡が、旧友の後妻と再会する。
感想
十時半睡事件帖の6巻目です。
好きな話ではありませんが、「おんな宿」は思わず今の若い子達を連想してしまいました。
家出少女達が共同で生活をし、幾人かは男性に助っ人として月に二、三度会って相談に乗ってもらったりお金を用立ててもらっています。
今なら男性=パパ、助っ人=援交といったところでしょうか。少女達はいたって悪びれる事もない、その姿に思わず現代を投影していまいました。
