上橋菜穂子 小説一覧

狐笛のかなた
精霊の守り人/闇の守り人/夢の守り人/虚空の旅人
[獣の奏者]闘蛇編/王獣編

狐笛のかなた

おススメ度 6

新潮社 新潮文庫 2006年12月

小夜は人の心が聞こえる〈聞き耳〉の力を持って生まれた。ある日、小夜は犬に追われる子狐を助け、森陰屋敷へと逃げ込む。小夜を助けたのはそこに閉じ込められている小春丸と言う少年だった。
仲良くなる二人を見つめる子狐野火は、隣の国の呪者の久那に送り込まれた霊狐だった。

16才になった小夜は亡くなった母を知る大朗と鈴の兄弟に出会う。その出会いにより小夜は自分の力に目覚めていく。
春名ノ国の跡継ぎ問題に巻き込まれた小夜は、そこで以前出会った霊狐の野火と再会する。野火は助けてくれた小夜を忘れられず、自分の命を構うことなく小夜を助ける事を誓った。

雰囲気は「精霊の守り人」の舞台を日本にし、日本の昔話の中に恋愛要素を取り入れた感じで、守り人シリーズに比べあっさりとした読み応えです。

話的にはありきたりな感じが否めませんが、ありきたりだからこそ、こういう話はたくさん書かれるし、面白いのでしょう。
ただ守り人に比べあっさりな分、一歩劣るかなと思います。どちらかというと淡々としています。それがこのような雰囲気の本の良さなのでしょうが、精霊の守り人を知っている分、ちょっと物足りない感じは否めませんでした。

だが、面白くないのかと言えばそうではなく、私は野火より小春丸の方が好きだったので反発しているだけかもしれません。

話はとてもきれいです、野火の硬い性格も良いです。ただ、もうすこし小夜と野火の恋愛模様を入れていただいたら、もっと野火に好感が持てたのにと残念です。

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精霊の守り人

おススメ度 9

新潮社 新潮文庫 2007年04月

短槍の使い手、女用心棒のバルサは新ヨゴ皇国の王子チャグムを偶然助ける。
二ノ妃に父帝からチャグムを守って欲しいと依頼されるが、チャグムを狙っていたのは帝だけではなかった。

チャグムは水を守る精霊ニュンガ・ロ・イムの卵を産えつけられており、その卵を好物とする魔物ラルンガにも狙われていた。

バルサは、幼馴染のタンダ、その師匠のトロガイとともにチャグムを匿う。

一番最初の感想は文字が大きい、でした。元が児童文学だからでしょうか。
ですが、児童文学と甘く見てはいけません。面白いのです。
児童文学で三十の女性が主人公と言うのは驚きましたが、これも面白い。
結婚をしていないので、小じわがあろうが若々しく、しかし年齢からくる落ち着きとが上手い具合に性格に現れており、好感が持てます。
幼馴染のタンダも好きです、個人的にこういう男性には好感が持てるので好評価です。

話はもちろん読みやすく、面白いが、奥が深いかといわれればそうではないと言わざるを得ないかもしれません。
奥行きがないのではなく、読みやすさ、わかりやすさを割合前面に出しているのでそう感じてしまうのでしょう。

しかしそんな事をしみじみ考える余裕もなく、一気に読めてしまいます。
本当に子供からご年配の方まで、幅広く読める作品ではないでしょうか。

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闇の守り人

おススメ度 9

新潮社 新潮文庫 2007年07月

チャグム、タンザと別れ、バルザは一人25年振りに故郷カンバル王国へと戻ってきた。
バルザは幼い頃、王座を巡る陰謀に巻き込まれ、父の親友ジグロと共に逃亡の日々を送っていた。
父はまもなく強盗に見せかけ暗殺され、二人には追っ手がかかったが、百年に一度の天才といわれたジグロにより、すべて返り討ちにされている。
そのジグロも病に倒れ、バルザはその追っ手の数だけ人を救うと誓っていた。

そして故郷へと向かう洞窟の途中で、カッサとジナの兄弟を助ける。その兄弟を助けた事が、更なる陰謀へとバルザを誘う。

前巻では心底の悪役がいなかったが、今回はとことん憎めるやつが出てきますね。
今回も一つの出来事がだんだんと大きくなっていきます。本人にその意思はなくとも揉め事を呼んでしまうのでしょう。

人物の性格付けというか、生かし方が上手いと思いました。カッサのいとこのカーム、脇役なのにいいところをさらっています。そういうの大好きです。

おそらく今回の旅で、バルサの心に一区切り付いた事でしょう。
1巻目と変わらず全体的にきれいな文章です、ほっとできる小説です。

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夢の守り人

おススメ度 8

新潮社 新潮文庫 2008年01月

バルサはガンシルバ〈奴隷狩人〉に追われる男を助ける。美しい娘でもないのに狙われたのを不思議に思うが、ユグノはすばらしい歌声を持ち、〈木霊〉に見初められ長寿を与えられたリー・トゥ・ルエン〈木霊の思い人〉であった。
ガンシルバから逃れるため、バルザはタンダの元に向かった。

一方タンダは眠り続ける姪のカヤを診ていた。〈生命〉はあっても〈魂〉がない状態にトロガイへと相談を持ちかけるタンダ。
夢の中にある〈花〉の世界に捕らわれていたカヤ、タンダはカヤを起こすため一人〈魂呼ばい〉を始めるが、〈花〉の世界に入ったタンダは〈花番〉に体を取られ人鬼と化してしまう。

更に夢に捕らわれたのはカヤだけではなく、新ヨゴ皇国の一ノ妃、そしてチャグムまでも夢へと捕らえられていた。

ユグノは〈花〉と共に生まれていた。彼を〈花〉の世界へ戻すためユグノへと襲いかかるタンダ。バルサはタンダであるために思うように力を振るえない。

しかし、そんな時チャグムが目を覚ます。タンダは〈花〉の中で自分の夢を守る呪文をかけており、その〈花〉の中でチャグムを見つけ、現世へと送りだしていた。

〈花〉にとらわれている魂を助けるため、そしてタンダを助けるため、バルサ達はシュガを通じチャグムに協力を依頼する。

新ヨゴ皇国に戻ってきました。しかしタンダは鬼と化してしまいます。
前作の旅が終わり、戻ってみればまた事件。故郷から戻ってきたバルザに待っていたのは、鬼となり自分に襲い掛かるタンダ。

タンダを思い、啖呵を切るところなど、今回バルサがどんなにタンダを大切に思っているかがわかります。そして、一度は別れたチャグムとの再会。
しかし一番の衝撃はトロガイの過去でしょう。
ただ引き込まれる感じは前作2作品に少し劣るかな、と思います。

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虚空の旅人

おススメ度 8

新潮社 新潮文庫 2008年08月

新ヨゴ皇国の皇太子チャグムはサンガル国の新王即位儀礼に招かれていた。
国王の次男タルサンと親交を結ぶ中、〈ナユーグル・ライタの目〉となった少女と出会う。
海の民であるナユーグル・ライタに体を取られ、死へと送られる運命の少女。しかし彼女に宿っていたのはナユーグル・ライタだけではなかった。

そしてサンガルに侵攻するタルシュ帝国。その手はすでにサンガル国内へと伸びていた。

今回の主人公はチャグム。バルサは一切出てきません。最初はちょっとがっかりしたのですが、話は面白かったです。
成長したチャグム、それを支えるシュガ。
今までの個人単位、国内単位の話ではなく、国家間の話に展開してきました。

〈ナユーグル・ライタの目〉など、思わず「精霊の守り人」を思い出します。同じような体験をしたチャグム。皇太子という立場を忘れるわけにはいかないが、少女を助けたいと動き出します。
本来の性格もあるのだと思いますが、やはりバルザと出会った事は少年の多少なりとも変化をもたらしているのでしょう。

しかしサンガルの女性人は強い。男で活躍出来たのはタルサンくらいでしょうか?

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獣の奏者 I 闘蛇編

おススメ度 8

講談社 講談社文庫 2009年08月

リョザ神王国の闘蛇衆が暮らす村で、母と二人で暮らす少女エリン。
ある時闘蛇が全滅するという事態が起きてしまい、闘蛇の獣ノ医術師として責任を問われた母はその原因に気付きながらも誰にも言わず処刑を受け入れた。

闘蛇の裁きにかけられた母を助けに向かうエリン。しかしそこにはすでに闘蛇が迫っていた。
霧の民であった母は、娘を救うため大罪を犯す。
母は指笛で闘蛇を操り、一人エリンをその場より逃れさせたのだ。

母を失ったエリンは蜂飼いのジョウンに助けられ、彼の元で暮らし始める。
そんな中、エリンは野生の王獣に出会う。

その平穏な生活もジョウンが王都へ戻る事を決意した事により終わりを迎え、エリンはカザルム学舎で王獣の医術師になろうと決意する。

しかしカザルム学舎で見る王獣は、エリンの目には以前に見た野生の王獣よりどこか違うように思えた。

更にそこには以前真王の誕生祝いの席で、真王の命を狙った暗殺者が放った矢を受けた幼い王獣がおり、エリンはその幼獣リアンの世話をする事になる。
命を狙われた真王は暗殺をいち早く察した「堅き盾」のイアンにより難を逃れていた。

精霊の守り人でも衝撃を受けましたが、再びこの獣の奏者でも衝撃を受けました。
まず読み始めたとたんに世界へと引き込まれ、一気に読んでしまいました。

残酷な程の母の死、母を失ったとはいえ平穏なジョウンとの暮らし。
しかしそれもやがて終わりを迎えます。

そして何よりエリンの生き物に対する洞察力が面白い。
ジョウンの所での蜂の生態、カザルム学舎での王獣の様子、エリンは他と違う洞察力があります。
それがやがてエリンを大きな争いへと誘われていく原因となるのですが。

精霊の守り人と比べると、若干獣の奏者は人物に焦点を置いているような気がします。人物の掘り下げが守り人より深いと感じました。

とにかく面白かったです。
読んで損はないと思います。おすすめ。

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獣の奏者 Ⅱ 王獣編

おススメ度 9

講談社講 談社文庫 2009年08月

王獣の扱いに関する王獣規範に囚われることなくリランの世話を続けるエリン、やがてリランは回復し、エリンは竪琴でリランと言葉を通わすようになる。

本来人に慣れない王獣には近付く時には、音無し笛により硬直させなければ近づく事が出来ないが、エリンは音無し笛がなくともリランに近づき、餌を与える事さえできるようになっていた。

やがて成長したエリンの前に霧の民が現れ、エリンの王獣を戒律の中へ戻すよう警告を発する。

しかしリランと共に飛翔する事さえできるようになったエリンは、卒舎後は教導師としてリランも共にカザルム学舎に残る事となる。
その頃にはエリンが世話をした傷を負った野生の王獣エクとリランの間に子供が生まれていた。
飼いならされた王獣は繁殖能力がないのだが、その奇跡に真王がリランの子を見にカザルム学舎へとやってくる。

不用意に王獣へ近づいた真王の身を案じ、教導師達が音無し笛を吹こうとするが、エリンはそれを止め、初めてカザルム学舎以外の者の前で竪琴で王獣を鎮める。

そして王都へ帰ろうとする真王の元へ闘蛇が襲いかかった。それを見たエリンはリランを駆り救出へ向かう。

一命を取り留めた真王のもとで晩餐に招かれるエリンは、そこで王獣規範に始まるある真実を真王へ告げた。

護衛として同行し闘蛇により傷を受けたイアンは、そこでエリンと出会い、先程の闘蛇がリョザ真王国の国防を担う大公の闘蛇ではないと知り、闘蛇に襲われた傷がもとで亡くなった真王の後を継いだセイミヤと、大公との間で起きようとする戦を止めるためエリンとイアルは王獣を駆った。

音無し笛を使う事を否定していたエリン、しかしそれを吹いてしまう事態が起きてしまいます。
全ては自分の油断が招いたとはいえ、あれほど吹かないと決めていた音無し笛。
その完璧ではないエリンに激しく心惹かれます。

そして、物語の最後がその光景が目に浮かぶように鮮烈です。

後半は真王と大公の間の闘争に巻き込まれていくのですが、その中で少しずつ動いていくエリンとイアン。
このイアンも堅き盾になるしかなかった生い立ち、それに感情移入していきます。

とにかくこの二人がいい!

飼われている王獣が野の王獣と違う理由、そして王獣規範の真意。
それを知りながらも戦場に立つエリン。

セイミヤが真王になってからはまさに怒涛の勢いでした。
本来ならこの巻で終わるはずだったようですが、続編があります。
そういう意味での続編には賛否両論が巻き起こりそうですが、たとえどんな結末が待っていようともどうしても読みたい!
そう思える作品でした。

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あ行 か行 さ行た行な行は行ま行や行ら行わ行