高瀬美恵 小説一覧

南風吹く日に
ユーフォリオン
[帝都夢幻道]
(前編) (後編)

南風吹く日に

おススメ度 4

双葉社 Futabafantasy 1996年04月

理性を失い、狂気に狂い、人間を食らってしまう奇病が発生した。
その病は南から来る風が吹くと発病するといわれる。

和田環はその病にかかった恋人志保を探すため、その患者が集められている渋谷へと潜入する。

やっと彼女を見つけ出すが、彼女の目は正気を保っていた。

読んだ瞬間、これは本当にさんの作品かと疑問に思いました。
一気に読ませる文章は高瀬さんだなと思いましたが、内容が今までと違います。くすっと笑える面白さはどこへ行ったのでしょう。思いきり真面目路線です。

私はこういう不思議な雰囲気の話が苦手なので、読みやすいですが話は微妙でした。ここはもう好き嫌いの問題なので、どうしようもありません。
高瀬さんの本でなかったらきっと読まなかったと思います。
個人的には初期作品の方が面白いです。

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ユーフォリオン

おススメ度 6

(角川) 電撃文庫 2002年12月

いじめにあっている空音は死を体験できる薬「ユーフォリオン」をミギワに貰った。本当に生き返ることが出来た空音は少しずつ心が強くなっていく。それが薬のせいだと気がつくが、ミギワは大量のユーフォリオンを持ち出し姿を消してしまう。

空音はミギワを探すため、同級生の勇人、兄の礼人、そして礼人の彼女であり、ミギワの姉の湊と共にミギワの残した携帯番号を頼りに四条理と接触するが、彼こそがユーフォリオンを作り出した一人だった。

「南風吹く日に」に比べればさんらしい本でした。特に四条理と鷺沼隆行あたりの関係は高瀬さんらしく、上手いなと思う。「破壊伝」のあの二人や「帝都夢幻道」のあの二人を思い出します。主人公も共感できますし、苦手なミステリー調でしたが高瀬さんの文章の面白さがあって読みやすいです。
あまり電撃っぽくはない作品ですが、よく高瀬さんの本を出してくれましたと拍手を送りたいです。

高瀬さんの小説はストーリーも面白いのが多いのですが、キャラクターが上手いです。この本も何気ない性格の主人公達ですが、高瀬さんが書かれると他とは一味違う良さがあると思います。どこが?といわれると困るのですが、本当に些細な差なんです。
それは長編を読むと良く分かります。ただ、この本は女性男性どちらでも読めると思いますが、長編はホワイトハートとかに多いので、男性は手に取りにくいのが残念です。

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帝都夢幻道(前編)

おススメ度 8

小学館 パレット文庫 2003年10月

「お覚悟あそばして!」
卯月千代の細い手が叩き込まれると、怪異は瞬く間に解け消えた。
天羽政仁率いる政府直属の極秘組織「怪奇事象研究室」に、「破魔」の力を持ち可憐なこぶしで悪を払う女学生千代、怪異を鋭く見破る「見魔」の力を持つ須磨由弥、怪異を縛する「縛魔」の力を持つ三宮悠太郎の三人は所属していた。

千代が仕事から帰る途中立ち寄ったのは、渡海晴久という強力な力を持つ人物だが、天羽の妹であり同じく強い力を持っていた妻の八重子を妖物に殺され、腑抜けになってしまった男のところだった。
密かに思いを寄せる千代だが、未だに妻に捕らえられている渡海は、その症状を重くするばかりだった。

怪奇事象研究室の最終的な目標は、魔物達が通る隧道を断ち、帝都を魔界から完全に切り離す事だった。
そのための装置「叢雲」は、ほぼ完成していたが、動かすためのエネルギーがなく、8、9月に起こると予測される地震の際に放出されるエネルギーを利用する計画が立てられていた。

その大地震の予測を聞かされた三人に、天羽は事前に皆に話すことを禁じる。それぞれの思いで納得できないが無理やり説き伏せられる。

その頃吉原では妖怪なのでは、と噂される六花という花魁がいた。
須磨には女が人間でないと分かっていたが、情を通じ彼女の元へと通っていた。

須磨は叢雲の計画に一人反対した。

叢雲の現場では謎の怪異が起こっており、怪異を収めようとする千代と三宮だが、雷光という魔界の棟梁の前になす術がなかった。
窮地を救ったのは、六花の子分雪雀だった。

千代たちの力では埒が明かないと、天羽は渡海を呼ぶをこと決める。
荒っぽい方法で渡海を正気づかせた天羽、現場の穴へとやってきた渡海は、やすやすと雷光を追い払った。

須磨は渡海の復帰を聞き、六花を守りながら戦えるかと不安を抱く。

六花の事を知った天羽は渡海を連れ遊郭を訪れた。
渡海は彼女を見たことがあった。六花は妻を殺した妖物だったのだ。
逃れようとする六花を追い詰める天羽、六花は渡海の前に消え去った。

パレット文庫と言う女の子しか読まないような文庫ですが、普通に万人受けする話だと思います。
話の雰囲気が、ちゃんと昔を感じさせ、妖物である六花の人物の書き方が上手い事。
そして天羽と言う男。冷静沈着に見えるが、妹に対して激しいコンプレックスを持つ。それを渡海は気づいているが、彼は天羽の妹の八重子を選びます。
妹のいない今、微妙に屈折している渡海と天羽の関係なんか本当に上手いと思います。

そして主人公が良い所のお嬢様なのに嫌味がなく、好感が持てる。応援したくなる。
主人公(ヒロイン)はそう思えるキャラクターじゃないといけません。
人物一人一人をとっても、性格付けの上手さが出ており、高瀬さんらしい話だと思います。

そして時代設定、この時代にする必然があります、そのさりげなさが良い。
雷光の間の抜けた返答や、女の子がこぶしで殴るところと、シリアスとのバランスもよく、崩れていません。
高瀬さんの中でもおススメしたい1冊です。

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帝都夢幻道(後編)

おススメ度 8

小学館 パレット文庫 2003年11月

六花を庇い天羽に撃たれた須磨、しかし六花の最後の力のせいか傷の治りは早い。須磨は叢雲を壊すため怪事研と敵対する。

一方千代は雪雀が言った「雪のドロップス」を、友達の和歌が口にしていたことを思い出し、訪ねていた。
それは和歌が読んだ小説「雪姫」の中の一説で、作者は天羽八重子だった。
その実体験を投影した話の中で、六花は八重子の友達として書かれていた。
その話を見ても渡海は天羽を信じ、彼に運命をゆだねる。

一人彷徨う須磨の前に雪雀が現れ、須磨は雪雀に六花の亭主だった雷光とのつなぎを頼み、妖物と手を組んだ。
夢幻道と言う魔界と人間界を結ぶ道を見せられるが、とても人には渡れそうもない。しかし、ただ一人この道を越えた人間がいた。
その人間こそ八重子であり、彼女の中には人間と妖物の二つが混在していた。

母親が殺された事件を勘違いした須磨は、雷光の力に捉えられる。
雪雀はそんな須磨のため千代と和歌と手を組んだ。

渡海達を襲う須磨、しかし彼は叢雲の計画ため掘った穴へと消えていった。その直後穴から大群の魔物が現れた。
そして再び襲い掛かる雷光、しかし渡海、千代、三宮が何とか消滅させた。

穴に落ちる瞬間、須磨は渡海に向かい手を伸ばしたが、渡海はその手を取らなかった。しかし彼は再び目を開けた。
須磨の前には千代、三宮、渡海、天羽、そして雪雀が待っていた。須磨は渡海に対する敬愛を捨て切れなかった。

渡海を待っていたのは天羽と大きな旅行鞄だった。
大地震のせいで壊滅する帝都を離れ、どこかに逃げるつもりだった。戻ろうとする渡海を昏倒させ、天羽は帝都を離れる。

天羽の逃亡に気づき、地震が迫っている事を予感した千代たちは、それに備えるが、大正十二年九月一日、大地震は起こった。

叢雲は発動し、夢幻道は閉ざされた。雪雀は消え、体に妖物が住まう須磨も千代と三宮を送り出した後姿を消す。

平たく倒壊した家屋の中、千代と三宮は奔走した。

二人逃れてきた渡海と天羽。
渡海は目の前にいるのが神でもなく、生かしておけば危険きわまりない人物だと気がつく。
天羽の手にナイフが見えたとき、渡海の中の迷いは晴れた。

少しずつ活気が戻ってきた帝都。千代が被災者を見舞っている時、ある人物が戻ってくる。

この独特の展開のよさ、高瀬さんの文章が後編もきちっと生かされてます。
読み返してみたら、つい夢中になってしまいました。
本当に笑えるところとシリアスのバランスがいいです。なので、展開が読めない。
もともと展開が読めない面白みのある文章を書かれ、だからこそ続きが気になる作者さんではあったのですが、この話も読めない展開で終わりを迎えています。
決して訳が分からないというのではありません。
雷光しかり、須磨しかり、最後まですべての人物が魅力的でした。
絵もストーリーにぴったりです。
2冊と言う短い話ですが、高瀬さんの話を堪能できます。
パレット文庫ながら、男性にもおススメできる1冊です。

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